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霞がかる夕日は、それでも君の頬を赤く染めていて――――――――






いつもの夕方。いつもの校庭。部活動に賑わうグラウンド。
2階の窓から見える風景は、いつも通り。

「なぁ。」

ニコニコして俺の前に、机上にどっかりと座ったソイツが口を開く。

「俺って誰だと思う?」

微笑。純粋な少年が浮かべるような、笑顔。
言っている事は滅茶苦茶だが。



「なーんでそんな顔してんだよ」



無視しているのに絶えず話しかけてくる。
ストレートの黒髪。前髪は伸ばしっぱなしの真ん中分け。
横髪も長く耳にかかっている。あきらかなる校則違反だ。
だが顔立ちは素朴でいて愛らしくも儚げな、綺麗な顔。

一つ気になっていること。
物凄く気になっていること・・・・












「お前・・・足は・・?」


「ないけど」


「は?」


「・・だから、ないけど」



あっけらかんというソイツに、口を開いた自分が馬鹿だったかと痛感。



ソイツの足は、膝の下から透けて見えないのだ。
これは…幽霊の類なのだろうか。
嫌にリアルで、フレンドリーだ。



「あ、幽霊ではないと思う。俺」



人の心を勝手に読んだらしい。



「いや、心は読んでないよ?君の露骨に薄気味がる顔で察してみた」



・・恐ろしい奴だ。



そういえば、いつからこいつは俺の前にいたのだろう。
気が付いたら。いや気がつくというか、何というか。
ごく当たり前のように目の前にいた。
まるで、空気のように。
いつ何時という話ではなく、それが当たり前と錯覚するほどに自然に。

それこそ、膝から下の透明部分と空気が違和感なくまじりあっているように。

何者だ、こいつは。


「それは俺が聞きたいんだって・・・」



「だからお前心読むなって」



「読んでないない。ほんとに。」



口角をキュッと上げ、屈託のない笑みが広がる。



「俺素直な子に育てられたからさ・・・嘘つけないんだなこれが」



冗談っぽく言うが、どこか切なげな表情を浮かべる。



「親は?」



「わかんね。思い出せないっていうか、いたことすら分からないっていうか」



「じゃあ、何でお前今『素直な子に育てられた』って言ったんだよ。」



「え?」


「だから、育てられた事実があるから、そんな言葉が出るんだろ。」



一瞬の沈黙。そいつは足を組み直して、あごに手を添えた。



「成程…俺は育てられたのか・・・」



「何を当たり前の事を」



「当たり前じゃねーよ。生命に育てられたのか。実に感慨深い・・」


何を言ってるんだこいつは…



「育てられるってなんだろうな。生命を維持すること?学ぶ事?
 俺という存在意義はどこで成り立つ?親ってなんだ?
 遺伝子の元?血の繋がってない生命に育てられる事もあるだろうに」



さっきまでの無知さはどこにいったのか、ぽんぽんと哲学的な事を言う。

滞り停止していた歯車が、潤滑油を得て勢いよく回り始めるように。




「なぁ、命って何なんだろう。それが分かれば俺が誰なのか分る気がするんだよ」



机から落ちそうになるくらい前につんのめって、俺に答えを乞うてくる。
さっきまでの少年らしい、愛らしい表情とはどこか違う。
寂しげな、今にも死んでしまいそうな儚い目。





命の意味なんて考えた事もない。命は命であって命だ。
生の世界でも死の世界でもきっと命はある。では命とは何を指すか?
心臓が動いている事が命?器と魂の関係が命?
考える事すら馬鹿らしくなってくるほど、答えは未知数であり限りなくゼロに近く。
答えという枠組みすらあるのかも分からない。



一つ言える事は




「命は、何にでもあるって言う事だ。」




「・・呆れた。なんだその答え」



そいつの顔は大きく歪んだ。
笑っているのか、涙をこらえているのか。
それとも、その答えに衝撃と『認めたくない』という感情がわいているのか。



「この世に在るもの全てが、命だよ。『認知』されてるんだ。
 それだけでソレは命なんだよ。認知されないものはそこには「無い」ものなんだから。
 無を考える必要はないだろ」



存在そのものが命なのかもしれない。呼吸をしているものが命なのかもしれない。
少なくとも、他のものと関わりを持っている事。それが「命」なのではないだろうか。






「はは・・・・呆れてさ・・・ほら」


そいつは手を大きく開いた。


・・・透けている。


さっきまで具体としてそこに在ったものが、透けて消えそうになっている。


「一体俺は、何者だったんだろうな。」



だらしなく窓によりかかる。
重みが無いのか、窓は少しも軋まずにそいつを受け止めた。







透き通った声。
体が消えそうなせいか、それとも切なさに押しつぶされているせいか。
透明なそいつの声は、俺の耳を伝わって脳を揺さぶる。
心に刻まれるような、鋭利なそれでいて繊細な、突き刺さる声。



「お前は・・・・・」



俺は初めてしっかりとそいつを見て、口を開いた。













「お前は、『命』だよ。」




















フッと微笑んだそいつの笑顔が、空気を伝わって俺の頬をくすぐった。

夕日の橙色が頬を染めて

静かに













そいつは消えて行った。





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